統計検定2級というかそれ以外でも必ず期待値ってのが出てきます。
平均とほとんど一緒のもんだろうという認識しかないのですが、だとしたら平均でいいじゃん
と思っていますが、でも別の用語なのでしっかり意味があるのだろう
ってことで、期待値と平均の違いが知りたく、調べてみました。
一言でいうと
期待値とは、一言でいうと、
「確率変数が取る値を、それぞれの確率で重み付けして足し合わせた平均値」
のことです。
記号では E(X) と表記されます。
ざっくり言えば、「ある試行を何回も何回も繰り返したときに、1回あたり平均してどれくらいの値になるかを表す理論上の値」です。
理論値ってことですね~
ただし、期待値は「必ず実際にその値になる」という意味ではありません。
例えば、サイコロの期待値は3.5ですが、3.5という目はありません。
ここは期待値を理解するときに重要なポイントです。
身近な例で考えてみる
一番イメージしやすい「普通の6面サイコロ」で考えてみます。
サイコロを1回振ったときに出る目を確率変数 X とすると、取りうる値 x は {1,2,3,4,5,6} で、それぞれの出る確率はすべて \frac{1}{6} です。
このときの期待値 E(X) を計算してみます。
「出る目 × その確率」をすべて足し合わせるので、計算式は以下のようになります。
E(X)=1\times\frac{1}{6}+2\times\frac{1}{6}+3\times\frac{1}{6}+4\times\frac{1}{6}+5\times\frac{1}{6}+6\times\frac{1}{6} =\frac{1+2+3+4+5+6}{6}=\frac{21}{6}=3.5サイコロの目の期待値は 3.5 になりました。
「サイコロに3.5なんて目は存在しないじゃん!」と思うかもしれませんが、それで問題ありません。
期待値は「実際にぴったり出る値」ではなく、同じ条件で試行を繰り返したときの平均値が長期的に近づいていく理論上の値と考えるとイメージしやすいです。
例えばサイコロを10回振って平均を計算すると、3.5になるとは限りません。
3.2になるかもしれないし、4.1になるかもしれません。
しかし、試行回数をどんどん増やしていくと、条件が同じであれば、その平均値は理論上の期待値3.5に近づいていきます。
「理論値と実際のデータの平均値は違うものなんだな」
ここでスッキリしました。
期待値と「平均」の違いってなに?
ここで気になるのが、
「普段使う平均(標本平均)と何が違うの?」
という点です。
ざっくり整理するとこんな感じです。
| 項目 | データ(標本)の平均 | 期待値 E(X) |
|---|---|---|
| 対象 | 実際に観測・収集されたデータ | 確率分布に基づく確率変数 |
| 意味 | 得られたデータの平均 | 確率分布から計算される理論上の平均 |
| 算出方法 | 集めた数値を全部足してデータの個数で割る | 取りうる値に「確率」を掛けて足し合わせる |
| 例 | サイコロを10回振った結果の平均 | サイコロの期待値3.5 |
例えば、
「実際にサイコロを10回振って、出た目を合計して10で割る」
のがデータの平均(標本平均)です。
一方、
「サイコロの理論上の確率分布に基づいて計算される平均」
が期待値です。
つまり、
平均は実際に得られたデータから計算するもの
期待値は確率分布から計算する理論上の平均
と考えると分かりやすいです。
そして「大数の法則」により、同じ条件での試行回数を増やしていくと、標本平均は理論上、期待値に近づいていきます。
かといって試行回数を増やすといっても、現実にサイコロを何千回も振るなんてめんどくさいことしなさそうw
期待値の存在は、まさに
期待されていた!!
のではないだろうか?
期待値と平均値の歴史
というわけで歴史を調べてみた。
ざっと調べると、
平均値:実際に得られたデータの代表値として、古くから利用されてきた
期待値:17世紀に発展した確率論や賭け事の問題と深く関係して発展した
という違いがあります。
圧倒的に平均値のほうが早い。
それはそのはずで、単に観測したデータを足して割るだけですからね。
一方、期待値のほうは、確率論が発展する中で、
「それぞれの結果がどのくらいの確率で起こるのか」
を考慮して平均的な結果を求めるための考え方として発展していきました。
特に17世紀には、ブレーズ・パスカルやピエール・ド・フェルマーが賭博に関する問題を研究しており、こうした研究が確率論の発展につながりました。
つまり、
平均 → 実際に起きたデータをまとめる
期待値 → 起こる確率を考慮して、理論上の平均を求める
という感じでしょうか。
まぁ別に「期待されて」生まれたわけではなく、賭け事の取り分などを考える「期待」という考え方から発展していったものみたいですよ。
ギャンブルかい!!w
定義と公式(離散型と連続型)
確率変数には、サイコロの目のように値が飛び飛びの「離散型」と、身長や時間のように連続的な値を取る「連続型」があります。
期待値の計算方法も、この2つで表現が変わります。
1. 離散型確率変数の期待値
確率質量関数を P(X=x_i)=p_i とすると、期待値はΣ(シグマ)を使って表します。
E(X)=\sum_i x_iP(X=x_i)=\sum_i x_ip_i要するに、
「すべての(実現値 × 確率)を足し算する」
ということです。
サイコロなら、
E(X)=\frac16(1+2+3+4+5+6)=3.5となります。
2. 連続型確率変数の期待値
確率密度関数を f(x) とすると、足し算(Σ)の代わりに積分(∫)を使います。
E(X)=\int_{-\infty}^{\infty}x\cdot f(x),dx「値 x に確率密度 f(x) を掛けて全領域で積分する」ことで求まります。
「離散型の足し算を、連続型用に積分に置き換えただけ」
と捉えると理解しやすいです。
ただし、連続型では f(x) は確率そのものではなく確率密度なので、そこは注意が必要です。
期待値の重要な性質(線形性)
統計学の計算問題で非常によく使う、期待値の便利なルールがあります。
それが「期待値の線形性」です。
定数を a,b、確率変数を X,Y とすると、以下の関係が成り立ちます。
E(aX+b)=aE(X)+b E(X+Y)=E(X)+E(Y)特に2つ目の公式は、
X と Y が互いに独立でなくても成り立つ
という強力な性質を持っています。
例えば、
E(X+Y+Z)=E(X)+E(Y)+E(Z)のように、複数の確率変数についても同じように考えることができます。
ここは計算問題でかなり使えそうですね。
練習問題
概念の理解を深めるための4択練習問題です。
直感に惑わされずに考えてみてください。
【問題】
確率変数 X の期待値 E(X) に関する記述として、最も適切なものを次の①〜④の中から1つ選んでください。
① 離散型確率変数 X において、期待値 E(X) は X が実際に取りうる値の中のいずれか1つと必ず一致する。
② 2つの確率変数 X,Y に対し、常に E(X+Y)=E(X)+E(Y) が成り立つ。
③ 確率密度関数 f(x) を持つ連続型確率変数 X の期待値は、E(X)=\int_{-\infty}^{\infty}f(x),dx で定義される。
④ 確率変数 X に定数 a を掛けた場合、その期待値は元の期待値と変わらず、E(aX)=E(X) となる。
解答・解説
正解:②
① 誤り
サイコロの例で見た通り、期待値は3.5となり、サイコロの目(1,2,3,4,5,6)のどれとも一致しません。
期待値は、必ずしも確率変数が実際に取りうる値の一つと一致するわけではありません。
② 正しい
期待値の線形性より、
E(X+Y)=E(X)+E(Y)が成り立ちます。
重要なのは、X と Y が独立である必要はないということです。
つまり、X と Y に何らかの関係があったとしても、期待値についてはこの関係が成り立ちます。
③ 誤り
\int_{-\infty}^{\infty}f(x),dx は、確率密度関数を全範囲で積分したものなので、全確率を表し、
\int_{-\infty}^{\infty}f(x),dx=1となります。
期待値を求めるには、x を掛けて、
E(X)=\int_{-\infty}^{\infty}x f(x),dxとします。
④ 誤り
定数倍の性質により、
E(aX)=aE(X)となります。
例えば、
E(X)=3なら、
E(2X)=6です。
確率変数の値を2倍すれば、その期待値も2倍になります。
まとめ
今回は「期待値とは何か?」について解説しました。
- 期待値は「各値 × 確率」の合計(重み付き平均)のこと
- 実際に得られたデータの平均ではなく、確率分布から計算される理論上の平均
- 離散型はΣ(和)、連続型は∫(積分)で計算する
- E(X+Y)=E(X)+E(Y) という線形性がある
- 期待値は必ずしも、確率変数が実際に取りうる値の一つとは限らない
今回のサイコロの例でいうと、
実際に振った結果の平均 → 標本平均
確率分布から計算した理論上の平均 → 期待値
という違いです。
「平均とほとんど一緒じゃん」と最初は思っていましたが、
何を材料にして平均を出しているのか
が違うわけですね。
確率分布が「確率変数の値と確率の関係」なら、期待値はその確率分布から計算される「理論上の中心」と考えると分かりやすそうです。
また忘れそうなので、ここにメモしておきますw
参考 関連用語
| 用語 | 簡易的な説明 |
|---|---|
| 確率変数 | 偶然によって値が決まる変数 |
| 実現値 | 確率変数が実際に取った具体的な値 |
| 確率分布 | 確率変数の値と、それに対応する確率の関係 |
| 離散型確率変数 | 飛び飛びの値を取る確率変数 |
| 連続型確率変数 | 連続した値を取る確率変数 |
| 確率質量関数(PMF) | 離散型確率変数が特定の値を取る確率を表す関数 |
| 確率密度関数(PDF) | 連続型確率変数の確率密度を表す関数。面積が確率になる |
| 期待値 E(X) | 確率変数の値を確率で重み付けして平均した理論上の値 |
| 標本平均 | 実際に得られたデータの合計をデータ数で割った値 |
| 期待値の線形性 | E(aX+b)=aE(X)+b や E(X+Y)=E(X)+E(Y) が成り立つ性質 |
| 大数の法則 | 試行回数を増やすと、標本平均が理論上の期待値に近づいていくという法則 |
| 分散 V(X) | 確率変数の値が期待値からどの程度ばらついているかを表す指標 |
| 標準偏差 \sigma | 分散の平方根。ばらつきの大きさを表す指標 |
| 確率母関数 | 離散型確率変数の確率分布を関数として表し、期待値や分散などを求めるのにも利用できる |
| 母平均 | 母集団における平均値。確率変数の期待値として表されることがある |

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