FP2級の勉強をしており、各制度や用語をまとめていきたいと思います。
今回は「傷病手当金」です。
令和4年(2022年)に支給期間の数え方が改正された制度で、FP2級でも重要なポイントになります。
また、本来であれば同じ病気の場合は一度しかもらえないイメージですが、条件によっては再び支給されることもあるそうです。
今回は、このあたりも含めて調べてみます。
もちろん、企業によっては独自の休職制度や手当などを用意している場合もあるので、今回の記事で説明するのはあくまで公的な傷病手当金制度についてという点には注意が必要です。
一言でいうと
傷病手当金とは、一言でいうと、
「会社員などが業務外の病気やケガで仕事を休み、十分な給与を受けられないときに、生活保障として健康保険から支給される給付」
のことです。
業務外の病気やケガによって仕事に就くことができず、連続する3日間の待期期間を含めて4日以上休んだ場合など、一定の条件を満たすと健康保険から支給されます。
具体例
実際に支給されるケースを見てみます。
- 休日に趣味のスポーツで骨折し、1か月間入院・自宅療養することになった会社員
→ 業務外のケガによる休業で、仕事に就くことができないなどの条件を満たせば対象になります。 - 病気と診断され、医師の意見などにより3か月休職することになった会社員
→ 業務外の病気による休業で、労務不能などの条件を満たせば対象になります。 - 業務中に工場の機械に挟まれてケガをし、療養のため休業した場合
→ 傷病手当金ではなく、原則として労災保険の対象となります。 - 自営業者やフリーランスなど、国民健康保険の被保険者が病気で長期療養する場合
→ 国民健康保険には、傷病手当金が法律上当然に支給される仕組みはありません。ただし、自治体などが独自に傷病手当金を設けている場合もあります。
このように、
「被用者保険に加入している人が、業務外の病気やケガで働けなくなったとき」
に利用できる生活保障の一つと考えると分かりやすいです。
傷病手当金の主な支給要件(4つの条件)
FP2級の試験では、傷病手当金が支給されるための条件がよく問われます。
ざっくり4つに整理すると以下のようになります。
| 要件 | 具体的な内容・試験ポイント |
|---|---|
| ① 業務外の病気・ケガであること | 業務上や通勤による病気・ケガは、原則として労災保険の対象となります。 |
| ② 療養のため労務不能であること | 病気やケガのため、それまで行っていた仕事に就くことができない状態であること。 |
| ③ 連続する3日間を含み4日以上休んでいること | 最初の3日間を「待期期間」といい、4日目以降が支給対象となります。 |
| ④ 休業期間について給与の支払いがないこと | 給与が支払われている場合は原則として支給されません。ただし、給与額が傷病手当金より少ない場合は差額が支給されます。 |
この4つをセットで覚えておきたいです。
待期3日間(たいきみっかかん)
特に重要なのが「待期3日」です。
傷病手当金を受けるためには、まず連続して3日間仕事を休む必要があります。
この最初の3日間を「待期期間」といい、傷病手当金が支給されるのは4日目以降です。
ここで注意したいのが、
待期3日間は、単純に「3日間欠勤した」という意味ではない
ということです。
待期には休日も含まれる
待期期間には、土曜日・日曜日・祝日などの公休日も含めることができます。
また、有給休暇を取得した日も待期に含めることができます。
例えば、
金曜日に病気で仕事を休む
↓
土曜日も休む
↓
日曜日も休む
という3日間が連続していれば、待期が完成します。
そのうえで月曜日も労務不能で休んでいれば、月曜日が4日目となり、傷病手当金の支給対象となります。
逆に、
月曜日:休む
火曜日:出勤
水曜日:休む
というように途中で出勤すると、連続した3日間にならないため、待期は完成しません。
ここは試験でも狙われそうですね。
支給額の計算方法
FP2級の実技試験などでは、支給される金額の計算イメージも重要です。
1日あたりの支給額は、原則として以下の計算式で求めます。
1日あたりの支給額 = 支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額の平均額 ÷ 30 × \frac{2}{3}
ざっくり捉えると、
「標準報酬月額の日額のおおむね3分の2」
と覚えておくと分かりやすいです。
ただし、実際には標準報酬月額の平均額を使って計算するため、単純に「今の給料の3分の2」と考えるのは正確ではありません。
また、支給開始日以前の被保険者期間が12か月に満たない場合には、別の計算方法が適用されます。
支給期間は「通算1年6か月」
傷病手当金で特に重要なのが、2022年(令和4年)1月1日から変更された支給期間の考え方です。
現在は、傷病手当金の支給期間について、
「支給開始日から通算して1年6か月」
という考え方になっています。
改正前
改正前は、支給開始日から1年6か月が経過すると、途中で傷病手当金を受け取っていない期間があっても支給期間が終了する仕組みでした。
例えば、
6か月受給
↓
復職して6か月働く
↓
再び休職
となった場合、最初の支給開始日から1年6か月が経過すると、残りの期間について傷病手当金を受け取れなくなる可能性がありました。
改正後
2022年1月からは、
実際に傷病手当金が支給された期間を通算して1年6か月
という考え方に変更されています。
そのため、途中で復職して傷病手当金が支給されない期間があった場合、その期間については支給期間を消化しません。
ここはFP2級では、
「傷病手当金 → 通算1年6か月」
と覚えておきたいところです。
他の給付との調整(併給調整)
傷病手当金と他の給付を同時に受け取れる場合には、重複して給付されないよう調整が行われることがあります。
1. 出産手当金との関係
傷病手当金と出産手当金の両方を受けられる場合は、出産手当金の支給が優先されます。
ただし、出産手当金の額が傷病手当金の額より少ない場合には、一定の条件のもとで、その差額が傷病手当金として支給されます。
2. 障害厚生年金・障害手当金との関係
同一の傷病について障害厚生年金などを受けることになった場合、傷病手当金との間で支給調整が行われます。
基本的には障害年金等が優先され、年金額を日額に換算した額が傷病手当金より少ない場合には、その差額が傷病手当金として支給されます。
なお、障害厚生年金だけでなく、障害基礎年金を同時に受給する場合には、両方の年金額を合算して調整する点にも注意が必要です。
退職した後も傷病手当金をもらえる?
「会社を辞めたら傷病手当金も終わるのでは?」
と思いますが、一定の条件を満たせば、退職後も継続して受給できる場合があります。
代表的な条件は、
- 退職日までに継続して1年以上被保険者であること
- 退職時点で傷病手当金を受けている、または受けられる状態にあること
- 退職後も引き続き支給要件を満たしていること
などです。
ここで注意したいのは、
「退職してから新しく傷病手当金を申請できる」という制度ではない
ということです。
退職後の継続給付は、退職前から受給要件を満たしていることが重要です。
同じ病気でも、もう一度もらえることはある?
今回、個人的に気になったのがここです。
「傷病手当金は同じ病気なら一度しかもらえない」
というイメージがありますが、これは少し正確ではありません。
現在の制度では、同一の傷病について、支給期間を通算して1年6か月までというのが基本です。
そのため、
「同じ病気だから一生に一度しか支給されない」
という制度ではありません。
例えば、支給期間の途中で仕事に復帰し、その後再び同じ傷病によって労務不能になった場合には、残っている支給期間について傷病手当金が支給される可能性があります。
「社会的治癒」によって再度支給される場合もある?
さらに複雑なのが、いわゆる「社会的治癒」です。
医学的には完全に治っていなくても、
- 一定期間、通常どおり仕事をしている
- 通院や投薬などの治療が必要ない状態になっている
- 日常生活や就労に問題がない
などの状態が一定期間続いた後、再び症状が発生した場合に、以前の傷病とは別の新たな傷病として扱われることがあります。
このような考え方が「社会的治癒」です。
例えば、
病気で傷病手当金を受給
↓
その後、症状が改善して職場復帰
↓
長期間にわたり通常どおり勤務
↓
治療や投薬も必要なくなる
↓
その後、再び同じ病名の症状が発生
というケースです。
この場合、医学的には同じ病気に見えても、一定の条件を満たして「社会的治癒」が認められれば、新たな傷病として扱われ、傷病手当金の支給について改めて判断される可能性があります。
ただし、
「何年間働けば社会的治癒になる」
といった全国一律の明確な基準があるわけではありません。
実際には、治療の状況、就労状況、症状の経過などを踏まえて、個別に判断されます。
したがって、FP2級の勉強としては、
「同じ傷病なら必ず二度ともらえない」ではなく、支給期間は通算1年6か月が基本で、社会的治癒などによって新たな傷病として扱われる可能性もある
くらいに理解しておくのがよさそうです。
土日・祝日も傷病手当金は支給される?
ここも意外と間違えやすいところです。
傷病手当金は「会社の営業日」だけを対象とする制度ではありません。
支給要件を満たして労務不能となっている期間については、土曜日・日曜日・祝日などの公休日も支給対象となります。
例えば、
月曜日:休業
火曜日:休業
水曜日:休業
木曜日:休業
金曜日:休業
土曜日:公休
日曜日:公休
という場合、待期3日が完成した後の期間については、土日も支給対象になります。
待期期間にも休日を含められる
さらに重要なのが、待期3日にも休日を含められることです。
例えば、
金曜日:休業
土曜日:公休
日曜日:公休
と3日間連続して労務不能であれば、待期期間が完成します。
そのため、翌月曜日も労務不能であれば、月曜日から支給対象となります。
給与が支払われている場合はどうなる?
傷病手当金は、病気やケガで働けない期間の生活保障を目的とした制度です。
そのため、休業中に会社から給与が支払われている場合、原則として傷病手当金は支給されません。
ただし、
給与の額が傷病手当金の額より少ない場合
には、その差額が支給されることがあります。
また、有給休暇を取得した場合も、その日は給与が支払われるため、原則として傷病手当金は支給されません。
ただし、有給休暇を取得した日でも、待期3日を完成させるための「待期」には含めることができます。
この、
「待期には含めることができる」
「でも給与が支払われるので、その日は傷病手当金が支給されない」
という違いは覚えておきたいですね。
練習問題
理解度を確認するための4択問題です。
FP2級レベルの基礎知識をチェックしてみましょう。
【問題】
健康保険の傷病手当金に関する記述として、最も適切なものを次の①~④の中から1つ選んでください。
① 国民健康保険の被保険者が業務外の病気やケガで療養した場合、法律上、当然に傷病手当金が支給される。
② 傷病手当金の待期期間である連続3日間には、有給休暇を取得した日や会社の休日を含めることができない。
③ 1日あたりの傷病手当金の支給額は、原則として支給開始日以前12か月間の各月の標準報酬月額の平均額を30で除した額の3分の2に相当する額である。
④ 傷病手当金の支給期間は、支給開始日から暦どおり1年6か月であり、途中で傷病手当金が支給されない期間があっても繰り越されない。
解答・解説
正解:③
① 誤り
国民健康保険には、傷病手当金が法律上当然に支給される仕組みはありません。
ただし、条例等によって独自に支給される場合があります。
② 誤り
待期3日間には、有給休暇を取得した日や土日・祝日などの公休日も含めることができます。
③ 正しい
原則として、
支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額 ÷ 30 × 3分の2
で計算します。
④ 誤り
2022年1月の改正により、支給期間は「支給開始日から暦どおり1年6か月」ではなく、支給された期間を通算して1年6か月となっています。
まとめ
今回はFP2級試験対策として「傷病手当金」について勉強しました。
ポイントをまとめると、
- 業務外の病気やケガによる休業が対象
- 労務不能であることが必要
- 連続3日間の待期を経て、4日目から支給対象
- 待期には有給休暇や土日・祝日などの公休日も含められる
- 1日あたりの支給額は原則として標準報酬月額の平均額を基にした額の3分の2
- 支給期間は通算1年6か月
- 退職後も一定の条件を満たせば継続給付を受けられる場合がある
- 出産手当金や障害年金などと重複する場合は支給調整が行われる
- 「同じ病気なら一生に一度」ではなく、通算1年6か月という考え方が基本
- 社会的治癒などによって、再発時に新たな傷病として扱われる可能性もある
といったところを押さえておけばよさそうです。
今回の内容で特に重要なのは、
「業務外」
「待期3日」
「4日目から」
「3分の2」
「通算1年6か月」
あたりですね。
FP2級では数字や条件を少し変えた問題が出てきそうなので、このあたりはセットで覚えておきたいと思います。
また、今回調べていて分かったのですが、会社独自の休職制度や手当などもあるため、
「傷病手当金=休職中にもらえるお金のすべて」ではない
という点にも注意が必要ですね。
参考・関連用語
| 用語 | 簡易的な説明 |
|---|---|
| 傷病手当金 | 業務外の病気やケガで仕事を休み、給与が十分に支払われない場合に健康保険から支給される給付。 |
| 待期期間 | 傷病手当金の支給に必要な連続3日間の休業期間。 |
| 労務不能 | 病気やケガのため、それまで行っていた仕事に就くことができない状態。 |
| 標準報酬月額 | 健康保険・厚生年金保険の保険料や給付額の計算に用いられる基準額。 |
| 出産手当金 | 出産のため会社を休み、給与が支払われない場合などに健康保険から支給される給付。 |
| 休業補償給付 | 業務上または通勤による病気・ケガの療養のため休業した場合に、労災保険から支給される給付。 |
| 被用者保険 | 会社員などが加入する健康保険や厚生年金保険などの公的保険。 |
| 国民健康保険 | 他の公的医療保険に加入していない人を対象とする医療保険。 |
| 障害厚生年金 | 病気やケガによって一定の障害状態になった場合に支給される厚生年金の給付。 |
| 社会的治癒 | 医学的な完治とは別に、一定期間通常の生活・就労を続け、治療の必要がない状態などを経た後の再発を、新たな傷病として扱う際に問題となる考え方。 |
| 継続給付 | 一定の条件を満たして退職した場合に、退職後も傷病手当金を受給できる仕組み。 |
| 併給調整 | 複数の公的給付を受ける場合に、給付が重複しすぎないよう支給額を調整する仕組み。 |

コメント