【統計検定2級】確率変数の分散

統計検定2級

今回は、統計検定2級の確率論分野において頻出する「確率変数の分散」について解説します。

確率変数の分散は、サイコロの目やコインの表裏のように「確率的に変化する値(確率変数)」が、理論上の平均値(期待値)のまわりにどれくらいばらついているかを表す指標です。手元にある数値のばらつきを計算する「データの分散」とは定義や計算手順が異なるため、その違いを正しく整理することが試験攻略の第一歩となります。

確率変数の分散を一言でいうと

確率変数の分散とは、確率変数が理論上の平均値(期待値)からどれくらい離れてばらつくかを、確率の重み付けを考慮して表した数値のことです。

記号では V[X]\sigma^2(シグマ2乗)と表記されます。確率変数の値が期待値の近くに集中しているほど分散は小さくなり、広く散らばっているほど分散は大きくなります。

確率変数の分散の基本公式(定義式)

確率変数 X の期待値を E[X] = \mu とします。このとき、確率変数の分散 V[X] は以下の期待値の式として定義されます。

V[X] = E\left[ (X - \mu)^2 \right]

確率変数 X が離散型(とびとびの値をとる変数)の場合、具体的な計算式は以下のようになります。X がとる値 x_i と、それが起こる確率 p_i を用いて、偏差の2乗に確率を掛け算して足し合わせます。

V[X] = \sum_{i=1}^{n} (x_i - \mu)^2 p_i

「データの分散」ではデータの個数 n で割り算を行いましたが、確率変数の分散では「起こりやすさ(確率)を掛けて足し合わせる」という操作を行う点が特徴です。

計算を劇的にラクにする変形公式

定義式を使って計算を行うと、期待値 \mu が小数や分数になった場合に引き算や2乗の計算が非常に複雑になります。そこで、実際の試験計算では以下の変形公式が必須となります。

V[X] = E[X^2] - (E[X])^2

これは「確率変数の分散 =(2乗の期待値)-(期待値の2乗)」を表しています。統計検定2級の計算問題の多くは、この変形公式を利用することで迅速かつ正確に解くことができます。

なぜ2乗するのか?

公式の内部では、期待値からのズレ(偏差)を必ず2乗しています。これは、期待値 \mu が確率分布の「重心」にあたるため、2乗せずにそのまま確率を掛けて足し合わせると、どのような確率分布であっても合計が必ず「0」になってしまうためです。

マイナスのズレをプラスの価値に変換し、純粋なばらつきの大きさを評価するために「2乗」の操作が必要になります。また、数学的に絶対値よりも2乗のほうが微分などの数式変形をスムーズに行えるというメリットもあります。

確率変数の分散における重要な3つの性質(線形性)

統計検定2級では、確率変数を a 倍したり、定数 b を足したりしたときの「新しい分散」を求めさせる問題が非常によく出題されます。以下の3つの性質は確実に暗記しておく必要があります。

数式言葉での意味理由・直感的理解
V[c] = 0定数 c の分散は0になります。変化しない決まった値(定数)には、ばらつきが一切存在しないためです。
V[X + b] = V[X]定数を足しても、分散は変化しません。データ全体をそのまま平行移動させても、ばらつきの幅(間隔)は変わらないためです。
V[aX] = a^2 V[X]a 倍すると、分散は a^2になります。分散は「2乗」を基準に計算している指標であるため、倍率も2乗になって外に出ます。

これらをまとめると、一般に以下の公式が成り立ちます。定数 b は完全に消滅し、a は2乗になる点に注意が必要です。

V[aX + b] = a^2 V[X]

理解を深める例題(サイコロの目の分散)

一般的な6面体のサイコロを1回振ったときに出る目を確率変数 X とし、その分散を変形公式を用いて計算します。

例題:問題

1から6の目が等確率(各 \frac{1}{6})で出るサイコロがあります。このとき、出る目の確率変数 X の分散 V[X] を求めてください。

例題:解答・解説

変形公式 V[X] = E[X^2] - (E[X])^2 を使用するために、2つの期待値をステップに分けて計算します。

  1. 期待値(平均値) E[X] を求める
E[X] = 1 \cdot \frac{1}{6} + 2 \cdot \frac{1}{6} + 3 \cdot \frac{1}{6} + 4 \cdot \frac{1}{6} + 5 \cdot \frac{1}{6} + 6 \cdot \frac{1}{6}

= \frac{21}{6} = \frac{7}{2} 2乗の期待値 E[X^2] を求める
各値を2乗した状態(1, 4, 9, 16, 25, 36)に、それぞれ確率 \frac{1}{6} を掛けて足します。

E[X^2] = 1^2 \cdot \frac{1}{6} + 2^2 \cdot \frac{1}{6} + 3^2 \cdot \frac{1}{6} + 4^2 \cdot \frac{1}{6} + 5^2 \cdot \frac{1}{6} + 6^2 \cdot \frac{1}{6}

= \frac{1+4+9+16+25+36}{6} = \frac{91}{6} 変形公式に代入して分散 V[X] を計算する

V[X] = E[X^2] - (E[X])^2

= \frac{91}{6} - \left(\frac{7}{2}\right)^2

= \frac{91}{6} - \frac{49}{4}

= \frac{182 - 147}{12} = \frac{35}{12}

したがって、サイコロの目の理論上の分散は \frac{35}{12}(約2.92) となります。

練習問題

問題

ある確率変数 X の分散が V[X] = 5 であることが分かっています。このとき、新しく定義された確率変数 Y = -3X + 4 の分散 V[Y] の値として正しいものを1つ選んでください。

① -11
② 15
③ 19
④ 45

解答・解説

正解:④

解説:
確率変数の分散の性質 V[aX + b] = a^2 V[X] を適用します。

今回の数式 Y = -3X + 4 では、a = -3, b = 4 となります。公式に当てはめると以下のようになります。

V[-3X + 4] = (-3)^2 \times V[X]

定数の「+4」はばらつきの幅に影響しないため消滅します。また、X の係数である「-3」は2乗されて「9」になります(分散がマイナスになることは絶対にありません)。

与えられた V[X] = 5 を代入して計算を行います。

V[Y] = 9 \times 5 = 45

したがって、新しい確率変数 Y の分散は 45(④) となります。

まとめ

今回は「確率変数の分散」について解説しました。

  • 確率変数の分散は、理論上の確率分布におけるばらつきを示す指標で、偏差の2乗に確率を掛けて合計します。
  • 実務や試験の計算では、公式 V[X] = E[X^2] - (E[X])^2 を用いることでスムーズに計算が可能です。
  • 変数を変換する際、定数を足しても分散は変わりませんが、a 倍すると分散は a^2に拡大されます。

統計検定2級では、性質を正しく理解しているかを問う文章題や、記号変形の問題が定番となっています。特に係数がマイナスであっても2乗されてプラスになる点は間違いやすいポイントですので、しっかりと確認しておきましょう。

参考 関連用語

用語簡易的な説明
確率変数試行の結果に応じて、とる値が確率的に決定される変数のことです。
期待値(E[X]確率変数がとる値の理論上の平均値です。分散を求める基準点となります。
標準偏差(\sigma確率変数の分散の正の平方根です。変数の変換において SD[aX+b] = |a|SD[X] という性質を持ちます。
共分散2つの確率変数の関係性を表す指標です。複数の確率変数の和の分散(V[X+Y])を計算する際に必要となります。

コメント

タイトルとURLをコピーしました