今回は、統計検定2級の離散確率分布において、二項分布に並ぶ頻出テーマである「ポアソン分布」について解説します。
ポアソン分布は、「ある一定の時間や空間のなかで、めったに起こらない珍しい現象が何回発生するか」を扱う確率分布です。統計検定2級では、確率の計算問題だけでなく、期待値や分散のユニークな性質に関する特徴が非常によく狙われます。
ポアソン分布を一言でいうと
ポアソン分布とは、一定の時間や空間において、平均 λ 回起こるランダムな事象が、ちょうど k 回起こる確率の分布のことです。
記号では \mathrm{Po}(\lambda) や \mathrm{P}(\lambda) と表記されます(\lambda はギリシャ文字で「ラムダ」と読みます)。
具体的には、「1日あたりに発生する交通事故の件数」や「コールセンターに1時間にかかってくる電話の件数」、「パン生地のなかに含まれるレーズンの個数」など、実務においても幅広いシーンに適用されています。
ポアソン分布の確率関数(公式)
ある期間(または範囲)における事象の平均発生回数を \lambda とします。このとき、事象がちょうど k 回発生する確率 P(X = k) は、以下の公式で計算されます。
P(X = k) = \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!}- k:事象が発生する回数(0, 1, 2, \dots の整数値をとります。上限はありません)
- \lambda:一定時間・空間内での平均発生回数(\lambda > 0)
- e:ネイピア数(自然対数の底、約 2.718)
- k!:k の階乗(k \times (k-1) \times \dots \times 1)
一見すると複雑な数式ですが、ネイピア数 e^{-\lambda} は定数であり、分子の \lambda^k と分母の k! が回数によって変化する構造になっています。
ポアソン分布の期待値と分散の公式(最大の特徴)
ポアソン分布 \mathrm{Po}(\lambda) に従う確率変数 X の期待値 E[X] と分散 V[X] には、他の確率分布にはない非常にユニークな特徴があります。
ポアソン分布の期待値(平均)
E[X] = \lambda
ポアソン分布の分散
V[X] = \lambda
標準偏差
\mathrm{SD}[X] = \sqrt{\lambda}
ポアソン分布の最大の特徴は、「期待値(平均)と分散がどちらも同じ値 \lambda になる」という点です。統計検定2級の文章題や正誤判定問題では、この「平均=分散」という性質を知っているだけで瞬時に解ける問題が多いため、確実に暗記しておく必要があります。
二項分布からポアソン分布への近似(直感的理解)
ポアソン分布は、前回の記事で解説した「二項分布 B(n, p)」の特殊なケース(極限)として導き出すことができます。
二項分布において、「試行回数 n が非常に大きく(無限大)、成功確率 p が非常に小さい(めったに起きない)」という状況を考えます。このとき、平均発生回数 np の値を一定の \lambda(\lambda = np)に保ったまま n を大きくしていくと、二項分布の公式はポアソン分布の公式へと変化します。
この歴史的な経緯から、ポアソン分布は別名「まれにしか起こらない事象の確率分布(少数の法則)」とも呼ばれています。
理解を深める例題(コールセンターの着信件数)
具体的な数値を用いて、ポアソン分布の確率の計算を行います。スマホ等の画面幅に対応するため、計算式は縦に並べて展開します。
例題:問題
あるコールセンターでは、1分間に平均して 2 回の電話がかかってくる(ポアソン分布に従う)ことが分かっています。
(1)ある1分間に、電話がちょうど 0 回(1回もかかってこない)確率を求めてください。
(2)ある1分間に、電話がちょうど 2 回かかってくる確率を求めてください。
なお、ネイピア数の値は e^{-2} = 0.135 として計算してください。
例題:解答・解説
平均発生回数が \lambda = 2 であるため、この現象はポアソン分布 \mathrm{Po}(2) に従います。
(1)の解説
公式 P(X = k) = \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!} に \lambda = 2, k = 0 を代入します。※ 2^0 = 1, 0! = 1 と定義されます。
= \frac{1 \times 0.135}{1}
= 0.135したがって、1回もかかってこない確率は 13.5%(0.135) となります。
(2)の解説
同様に、公式に k = 2 を代入します。※ 2! = 2 \times 1 = 2 です。
= \frac{4 \times 0.135}{2}
= 2 \times 0.135= 0.27
したがって、ちょうど2回かかってくる確率は 27.0%(0.27) となります。
練習問題
問題
ある交差点における1週間あたりの重大事故の発生件数は、平均 1.4 回のポアソン分布に従うことが分かっています。このとき、この交差点における1週間あたりの重大事故発生件数の「分散」と「標準偏差」の組み合わせとして最も近いものを1つ選んでください。
① 分散:1.18、標準偏差:1.40
② 分散:1.40、標準偏差:1.18
③ 分散:1.40、標準偏差:1.96
④ 分散:1.96、標準偏差:1.40
解答・解説
正解:②
解説:
ポアソン分布の重要な性質である「期待値(平均)= 分散 = \lambda」を利用します。
問題文より、1週間あたりの事故の平均発生回数は \lambda = 1.4 です。ポアソン分布の性質から、平均値が 1.4 であれば、分散 V[X] も自動的に同じ値である 1.4 と定まります。
次に、標準偏差 \mathrm{SD}[X] は分散の正の平方根(ルート)となるため、以下のようになります。
\mathrm{SD}[X] = \sqrt{1.4}1.1^2 = 1.21、1.2^2 = 1.44 であることから、\sqrt{1.4} は 1.1 と 1.2 の間の値(約 1.183)であることが計算をせずとも絞り込めます。
したがって、分散は 1.40、標準偏差は 1.18 となり、正しい組み合わせは ② となります。
まとめ
今回は「ポアソン分布」の公式と性質について解説しました。
- ポアソン分布 \mathrm{Po}(\lambda) は、一定の時間や空間のなかで、まれに起こるランダムな事象の発生回数を表す分布です。
- ちょうど k 回発生する確率は \frac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!} の公式で求められます。
- 最大の特徴は「期待値(平均)と分散がどちらも \lambda で等しくなる」という点です。
統計検定2級では、公式に数値を代入させてネイピア数を用いて計算させる単純な問題のほか、「平均と分散が一致する」という特徴そのものを突いてくる問題が多く見られます。非常に特徴的な分布ですので、二項分布からの近似条件(n が大きく p が小さい)と合わせて確実に記憶しておきましょう。
参考 関連用語
| 用語 | 簡易的な説明 |
|---|---|
| ネイピア数(e) | 数学における重要な定数のひとつで、自然対数の底となる値(約 2.718)です。 |
| 二項分布 | 結果が2通りのベルヌーイ試行を回数を決めて繰り返したときの確率分布です。ポアソン分布の出発点となります。 |
| 指数分布(しすうぶんぷ) | ポアソン分布と表裏一体の関係にある連続型確率分布です。ポアソン分布が「発生回数」を数えるのに対し、指数分布は「次に事象が発生するまでの期間(時間)」を扱います。 |
| 定常ポアソン過程 | 事象が時間とともにランダムかつ独立に、一定の平均割合で発生するプロセスを指す数学的モデルです。 |


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