【統計検定2級】乗法定理

統計検定2級

今回は、統計検定2級の確率分野において基礎となる「確率の乗法定理(じょうほうていり)」について解説します。

確率の乗法定理とは、一言で表現すると「2つの事象がどちらも起こる確率(積事象の確率)」を求めるための計算規則です。この定理を正しく理解することは、統計検定2級で頻出する「ベイズの定理」や「独立性の判定」を解くための重要な土台となります。

確率の乗法定理を一言でいうと

確率の乗法定理とは、2つの事象 A と B が同時に(あるいは連続して)起こる確率を、それぞれの確率の掛け算によって求めるための公式です。

乗法定理を適用する際は、2つの事象がお互いに影響を与え合っているか(従属か)、あるいは影響を与え合っていないか(独立か)によって公式の形が変化します。

事象が「従属」である場合の乗法定理

2つの事象がお互いに影響を与え合っている(片方の結果によってもう片方の確率が変わる)関係を従属(じゅうぞく)と呼びます。

事象 A と事象 B が同時に起こる確率 P(A \cap B) は、条件付き確率を用いて以下のように表されます。

P(A \cap B) = P(A) \times P(B|A)
  • P(A \cap B):事象 A と事象 B が同時に起こる確率
  • P(A):まず事象 A が起こる確率
  • P(B|A):事象 A が起こったという前提のもとで、事象 B が起こる条件付き確率

この公式は、「まず A が起こり、その A が起こった状態のままで次に B が起こる確率」を掛け算していることを意味します。

事象が「独立」である場合の乗法定理

2つの事象がお互いに全く影響を与え合わない関係を独立(どくりつ)と呼びます。

事象 A が起ころうが起こるまいが、事象 B の起こる確率に変化がないため、条件付き確率は P(B|A) = P(B) となります。したがって、独立な場合の乗法定理は以下のように簡略化されます。

P(A \cap B) = P(A) \times P(B)

統計検定2級では、「2つの事象が独立であるか判定せよ」という問題がよく出題されます。その場合は、個別に求めた P(A) \times P(B) の値が、同時に起こる確率 P(A \cap B) と一致するかどうかを検証することで判定が可能です。

「独立」と「従属」の違いを表で整理

乗法定理における2つの関係性の違いを表にまとめました。

事象の関係同時に起こる確率 P(A \cap B)具体的な例
独立な事象
(影響なし)
P(A) \times P(B)・サイコロを2回続けて振るとき、1回目に1の目が出て、2回目に5の目が出る確率。
・コインとサイコロを同時に投げるとき。
従属な事象
(影響あり)
P(A) \times P(B|A)・当たりクジが含まれる箱から、引いたクジを戻さずに2回続けて引くとき、1回目も2回目も当たりを引く確率。

理解を深める例題(非復元抽出による確率の変化)

事象が影響を与え合う「従属」のケースについて、クジ引きの例題を用いて解説します。

例題:問題

あたりクジが 3 本、はずれクジが 7 本の、合計 10 本が入った箱があります。
この箱から、引いたクジを元に戻さない(非復元抽出)で、AさんとBさんの2人がこの順番で 1 本ずつクジを引きます。
このとき、AさんもBさんも連続してあたりクジを引く確率を求めてください。

例題:解答・解説

2人が連続してあたりを引くという事象は、お互いに影響を与える「従属」の関係になります。ステップに分けて計算を行います。

  1. Aさんがあたりクジを引く確率 P(A) を求める
    最初は箱の中に 10 本のクジがあり、あたりは 3 本です。したがって確率は以下のようになります。
    P(A) = \frac{3}{10}
  2. Aさんがあたった後で、Bさんがあたりクジを引く確率 P(B|A) を求める
    Aさんがあたりを引いたため、箱の中のクジは残り 9 本(うちあたりは 2 本)に減少しています。これが条件付き確率となります。
    P(B|A) = \frac{2}{9}
  3. 乗法定理を適用して、2人が同時にあたる確率 P(A \cap B) を計算する
    上記の2つの確率を掛け合わせます。
\begin{aligned} P(A \cap B) &= P(A) \times P(B|A) \ &= \frac{3}{10} \times \frac{2}{9} \ &= \frac{6}{90} = \frac{1}{15} \end{aligned}

したがって、AさんとBさんの2人が連続してあたりクジを引く確率は \frac{1}{15} となります。

練習問題

問題

ある製品の製造ラインにおいて、製品に「傷がある」という事象を A、「寸法が基準外である」という事象を B とします。
調査の結果、全製品における各確率は以下の通りでした。
・傷がある確率: P(A) = 0.10
・寸法が基準外である確率: P(B) = 0.05
・傷があり、かつ寸法も基準外である確率: P(A \cap B) = 0.02
このとき、事象 A と事象 B の関係性に関する記述として正しいものを1つ選んでください。

① 事象Aと事象Bは互いに独立である
② 事象Aと事象Bは互いに従属である
③ 事象Aは事象Bの排反事象である
④ 与えられた情報だけでは独立か従属か判定できない

解答・解説

正解:②

解説:
2つの事象が独立であるかどうかは、独立な場合の乗法定理 P(A \cap B) = P(A) \times P(B) が成立するかどうかで判定します。

まず、それぞれの確率の積を計算します。

P(A) \times P(B) = 0.10 \times 0.05 = 0.005

問題文で与えられている実際の同時確率 P(A \cap B) は 0.02 です。
数値を比較すると、以下のようになります。

P(A \cap B) \neq P(A) \times P(B) \quad (0.02 \neq 0.005)

公式が成立しないため、事象 A と事象 B は独立ではなく、お互いに影響を与え合っている従属(②)であると判定されます。

※今回のケースでは、実際の同時確率(0.02)の方が独立を仮定したときの確率(0.005)よりも高いため、「傷がある製品は、寸法も基準外になりやすい」という背景情報が読み取れます。

まとめ

今回は「確率の乗法定理」について解説しました。

  • 確率の乗法定理は、2つの事象が同時に起こる確率を、掛け算によって求めるための定理です。
  • 事象が従属している場合は、条件付き確率を用いて P(A \cap B) = P(A) \times P(B|A) と計算します。
  • 事象が独立している場合は、影響がないため P(A \cap B) = P(A) \times P(B) と単純に掛け算をします。

統計検定2級では、事象が独立か従属かを正しく見極めて公式を使い分けることが求められます。特に非復元抽出のように「1回目の行動によって2回目の状況が変わるか」に注目して問題を読み解くことが重要です。

参考 関連用語

用語簡易的な説明
積事象(A \cap B2つの事象 AB がどちらも起こる事象です。
条件付き確率ある事象が起こったという前提条件のもとで、別の事象が起こる確率です。
排反事象2つの事象が同時に起こることが絶対にない関係(P(A \cap B) = 0)です。独立とは異なる概念であるため注意が必要です。
非復元抽出一度取り出した標本を元に戻さない抽出方法です。各試行の確率が変化するため、事象は従属関係になります。

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