今回は、統計検定2級の確率論分野において、分散とセットで頻出する「確率変数の標準偏差」について解説します。
確率変数の標準偏差は、サイコロの目などの「確率変数」が持つ理論上のばらつきを、元の変数と同じ単位で評価するための指標です。分散の性質(線形性)と非常によく似ていますが、定数倍したときの変化の仕方に標準偏差特有の注意点があります。統計検定2級では、その違いを突いた問題が定番となっています。
確率変数の標準偏差を一言でいうと
確率変数の標準偏差とは、確率変数のばらつきを示す「分散」の正の平方根をとることで、数値を元のデータの単位に揃えた指標のことです。
記号では \sigma(シグマ)や \mathrm{SD}[X](Standard Deviationの略)と表記されます。分散が「2乗の単位」になっているのに対し、標準偏差は「元の単位」に戻っているため、平均値(期待値)からのズレの大きさを直感的に捉えやすくなります。
確率変数の標準偏差の基本公式
確率変数 X の分散を V[X] とします。このとき、確率変数の標準偏差 \sigma は以下の公式で定義されます。
\sigma = \sqrt{V[X]}手順としては、まず確率変数の分散 V[X] = E[X^2] - (E[X])^2 を計算し、その値にルート(平方根)を被せることで求めます。標準偏差は「正の平方根」として定義されているため、値がマイナス(負の数)になることは絶対にありません。
確率変数の標準偏差における重要な3つの性質(分散との違い)
統計検定2級では、確率変数を a 倍したり、定数 b を足したりしたときの「新しい標準偏差」の変化を問う問題が頻出します。分散の性質と比較しながら確認することが重要です。
| 数式 | 言葉での意味 | 分散の性質との違い |
|---|---|---|
| \mathrm{SD}[c] = 0 | 定数 c の標準偏差は0になります。 | 分散(V[c]=0)と同様に、変化しない決まった値にはばらつきが存在しないためです。 |
| \mathrm{SD}[X + b] = \mathrm{SD}[X] | 定数を足しても、標準偏差は変化しません。 | 分散(V[X+b]=V[X])と同様に、全体を平行移動させてもばらつきの幅は変わらないためです。 |
| \mathrm{SD}[aX] = |a| \mathrm{SD}[X] | a 倍すると、標準偏差は |a|(絶対値)倍になります。 | 分散は a^2 倍になりますが、標準偏差はルートを取るため a の絶対値倍になります。 |
これらをまとめると、一般に以下の公式が成り立ちます。
\mathrm{SD}[aX + b] = |a| \mathrm{SD}[X]試験で特に間違いやすいのは、a がマイナスの値のケースです。例えば a = -3 のとき、分散は (-3)^2 = 9 倍になりますが、標準偏差は |-3| = 3 倍になります。標準偏差は必ずプラスの値になるため、係数のマイナスは絶対値によってプラスに変換されます。
理解を深める例題(サイコロの目の標準偏差)
一般的な6面体のサイコロを1回振ったときに出る目を確率変数 X とし、その標準偏差を計算します。スマホ等の画面幅に対応するため、計算式は縦に並べて展開します。
例題:問題
1から6の目が等確率(各 \frac{1}{6})で出るサイコロがあります。このとき、出る目の確率変数 X の標準偏差 \mathrm{SD}[X] を求めてください。
なお、このサイコロの目の分散が V[X] = \frac{35}{12} であることは既知とします。
例題:解答・解説
基本公式 \mathrm{SD}[X] = \sqrt{V[X]} に数値を代入して計算を行います。
\mathrm{SD}[X] = \sqrt{\frac{35}{12}}= \frac{\sqrt{35}}{\sqrt{12}}
= \frac{\sqrt{35}}{2\sqrt{3}}分母を有理化するために、分子と分母に \sqrt{3} を掛け算します。
= \frac{\sqrt{35} \times \sqrt{3}}{2\sqrt{3} \times \sqrt{3}}= \frac{\sqrt{105}}{6}
\sqrt{105} \approx 10.247 であるため、小数で表すと以下のようになります。
\approx \frac{10.247}{6}\approx 1.71
したがって、サイコロの目の理論上の標準偏差は \frac{\sqrt{105}}{6} (約1.71) となります。
練習問題
問題
ある確率変数 X の標準偏差が \mathrm{SD}[X] = 4 であることが分かっています。このとき、新しく定義された確率変数 Y = -2X + 5 の標準偏差 \mathrm{SD}[Y] の値として正しいものを1つ選んでください。
① -3
② 4
③ 8
④ 13
解答・解説
正解:③
解説:
確率変数の標準偏差の性質 \mathrm{SD}[aX + b] = |a| \mathrm{SD}[X] を適用します。
今回の数式 Y = -2X + 5 では、a = -2, b = 5 となります。公式に当てはめると以下のようになります。
\mathrm{SD}[-2X + 5] = |-2| \times \mathrm{SD}[X]定数の「+5」はばらつきの幅に影響しないため消滅します。また、X の係数である「-2」は絶対値が取られて「2」になります。標準偏差がマイナスになることはありません。
与えられた \mathrm{SD}[X] = 4 を代入して計算を行います。
\mathrm{SD}[Y] = 2 \times 4= 8
したがって、新しい確率変数 Y の標準偏差は 8(③) となります。
まとめ
今回は「確率変数の標準偏差」について解説しました。
- 確率変数の標準偏差は、分散の正の平方根(\sqrt{\text{分散}})であり、必ず0以上の値になります。
- 変数を変換する際、定数を足しても標準偏差は変わりませんが、a 倍すると標準偏差は |a|(絶対値)倍になります。
- 係数がマイナスであっても、ばらつきの幅を示す標準偏差はプラスの値として外に出るため、符号の扱いに注意が必要です。
統計検定2級では、Y = aX + b のような変数変換をさせた上で、分散と標準偏差の数値を正しく導き出せるかを識別する問題が頻出します。分散は「2乗倍」、標準偏差は「絶対値倍」というルールを確実に整理しておきましょう。
参考 関連用語
| 用語 | 簡易的な説明 |
|---|---|
| 分散(V[X]) | 確率変数のばらつきを偏差の2乗の期待値で表した指標です。標準偏差を2乗すると分散になります。 |
| 絶対値(||) | 数直線上で、ある数から原点(0)までの距離を表す記号です。マイナスの数値をプラスに変換します。 |
| 期待値(E[X]) | 確率変数の理論上の平均値です。定数倍や足し算において E[aX+b] = aE[X]+b という性質(線形性)を持ちます。 |
| 標準化(じょうじゅんか) | 確率変数を「平均0、標準偏差1」のデータに変換する操作です。Z = (X - \mu) / \sigma によって計算されます。 |


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