中心傾向の指標「平均値」とは?
データの中心的な位置や全体傾向を表す統計量を「中心傾向の指標(代表値)」と呼びます。その中でも最も頻繁に利用されるのが「平均値(Mean)」です。統計検定2級では、通常の算術平均だけでなく、データの特性に応じた各種平均(加重平均・幾何平均・調和平均)の使い分けや、平均値が持つ重要な数学的性質が頻出となります。
各種平均値の定義と使い分け
データの内容や目的に応じて適切な平均値を選択する必要があります。それぞれの定義と計算公式、適用できるデータの例を押さえましょう。
| 概念・種類 | 定義・計算公式 | 適用場面・具体例 | 試験での引っかけ・注意点 |
|---|---|---|---|
| 算術平均 (相加平均) | すべてのデータの和をデータ数で割った値。 \bar{x} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_i | 通常の長さ、重量、テストの点数など一般的な量的データの要約。 | 外れ値(極端な値)の影響を非常に強く受ける。右に裾が長い分布などでは代表値として不適切になる場合がある。 |
| 加重平均 | データそれぞれの重み(ウェイト)を考慮して算出する平均。 \bar{x} = \frac{\sum_{i=1}^{n} (w_i \cdot x_i)}{\sum_{i=1}^{n} w_i} | 各教科の単位数を考慮した成績算出、ポートフォリオの期待収益率、物価指数。 | データ数が異なる複数グループの平均値を合算する際、単純な平均値の平均をとってはいけない場合に適用する。 |
| 幾何平均 (相乗平均) | 全データの積の n 乗根。 G = \sqrt[n]{x_1 \times x_2 \times \cdots \times x_n} | 変化率・倍率・成長率の平均(例:過去数年間の売上高成長率、株価の騰落率)。 | 【超頻出】変化率の平均に算術平均を使うと過大評価になる。負の値や 0 が含まれるデータには使用できない。 |
| 調和平均 | 逆数の算術平均の逆数。 H = \frac{n}{\sum_{i=1}^{n} \frac{1}{x_i}} | 速度や割合の平均(例:往復の平均速度、単位時間あたりの作業量)。 | 「行き60km/h、帰り40km/hの往復平均速度は50km/h」は誤り(正しくは調和平均で 48km/h)。 |
平均値の重要な性質と公式
計算問題や概念問題で繰り返し問われる平均値の重要な性質です。
1. 偏差の和は常にゼロ
各データ値 x_i と平均値 \bar{x} の差を「偏差(Deviations)」と呼びます。全データの偏差を合計すると、正負が打ち消し合って常に必ず 0 になります。
2. 一次変換(線形変換)の影響
元のデータ x_i に対して定数 a を掛け、定数 b を足す一次変換 y_i = a x_i + b を行った場合、変換後の平均値 \bar{y} は元の平均値 \bar{x} にそのまま連動します。
3. 各種平均値の大小関係
すべてのデータが正の値(x_i > 0)であるとき、調和平均 H、幾何平均 G、算術平均 \bar{x} の間には常に以下の大小関係が成り立ちます(相加・相乗・調和平均の不等式)。
※すべてのデータ値が等しい場合(x_1 = x_2 = \cdots = x_n)に限り、等号が成立します。
試験対策チェックポイント
- 売上伸ばし率や人口増加率など、「パーセンテージや倍率の平均」を問われたら幾何平均(相乗平均)を使用する。
- 往復の平均移動速度のように「単位あたりの量の平均」を問われたら調和平均を使用する。
- データ全体を a 倍して b 足したとき、平均値もそのまま a 倍して b 足されることを計算問題で素早く適用できるようにする。
- どのようなデータであっても「偏差の和は 0」になることを分散・標準偏差の導出基礎として記憶しておく。
確認問題(統計検定2級レベル)
問題
平均値に関する次の記述のうち、最も不適切なものを1つ選べ。
- ある店舗における過去3年間の売上増加率が順に 10%、20%、32% であったとき、平均増加率を求めるには幾何平均を用いるのが適切である。
- データセットの各値 x_i から平均値 \bar{x} を引いた偏差 x_i - \bar{x} の合計は、データの分布形状に関わらず常に 0 になる。
- 変数値 x の平均値が \bar{x} = 50 であるとき、新しい変数 y = 2x - 10 の平均値 \bar{y} は 90 となる。
- すべてのデータが異なる正の実数であるとき、算術平均 \bar{x}、幾何平均 G、調和平均 H の間には常に \bar{x} < G < H の関係が成立する。
解答・解説
正解: 4
【解説】
1:適切。増加率や倍率の平均には幾何平均(相乗平均)を用いる。(※倍率である 1.10、1.20、1.32 の積の 3 乗根から求める。)
2:適切。平均値の定義より、偏差の総和 \sum (x_i - \bar{x}) は常に 0 となる。
3:適切。一次変換の性質より、\bar{y} = 2\bar{x} - 10 = 2 \times 50 - 10 = 90 となる。
4:不適切。正の実数データにおける大小関係は H \le G \le \bar{x}(調和平均 \le 幾何平均 \le 算術平均)である。本肢は大小関係が逆になっているため誤り。(※すべて異なるデータの場合は等号を含まず H < G < \bar{x} となる。)



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