【統計検定2級】指数分布

統計検定2級用語・練習問題

今回は、統計検定2級の連続型確率分布分野において、出題率が非常に高い重要なテーマである「指数分布(しすうぶんぷ)」について解説します。

指数分布は、「次に大きな地震が起こるまでの期間」や「コールセンターに次の電話がかかってくるまでの待ち時間」、「電球が切れるまでの寿命」のように、ある事象が次に発生するまでの時間や間隔を扱う確率分布です。統計検定2級では、確率の計算はもちろん、期待値や分散の公式、そして幾何分布と同様に持つ「無記憶性」というユニークな性質がよく狙われます。

指数分布を一言でいうと

指数分布とは、単位時間あたりに平均 λ 回起こるランダムな事象について、次にその事象が起こるまでの待ち時間 x の確率分布のことです。

記号では \mathrm{Ex}(\lambda) や \mathrm{Exp}(\lambda) と表記されます(\lambda はポアソン分布でも登場した平均発生回数「ラムダ」です)。

グラフを描くと、時間が経つにつれて確率密度が右下がりに急激に減少していくという、特徴的な形状(指数関数的な減衰)をとります。

指数分布の確率密度関数

単位時間あたりの平均発生回数を \lambda とします。このとき、次に事象が起こるまでの待ち時間 X がとる確率密度関数 f(x) は、以下の公式で定義されます。

f(x) = \lambda e^{-\lambda x} \quad (x \ge 0)
  • X:次に事象が起こるまでの待ち時間(時間はマイナスにならないため、必ず x \ge 0 となります)
  • \lambda:単位時間あたりの平均発生回数
  • e:ネイピア数(自然対数の底、約 2.718)

なお、実際の試験問題で特定の時間 t までに事象が起こる確率(累積確率分布関数)を求める際は、積分計算によって導かれる以下の公式を利用します。

P(X \le t) = 1 - e^{-\lambda t}

指数分布の期待値と分散の公式

指数分布 \mathrm{Ex}(\lambda) に従う確率変数 X の期待値 E[X] と分散 V[X] は、以下の公式で表されます。分母の \lambda の次数が期待値と分散で異なる点に注意が必要です。

指数分布の期待値(平均)

E[X] = \frac{1}{\lambda}

指数分布の分散

V[X] = \frac{1}{\lambda^2}

標準偏差

\mathrm{SD}[X] = \frac{1}{\lambda}

期待値が \frac{1}{\lambda} になるのは、直感的にも非常に納得しやすい性質を持っています。例えば、1時間に平均して2回電話がかかってくるコールセンター(\lambda = 2)を考えます。このとき、次の電話がかかってくるまでの平均的な待ち時間を考えると、\frac{1}{2} = 0.5 時間(30分)となります。このように、発生頻度の逆数が平均的な待ち時間になります。

幾何分布・ポアソン分布との密接な関係

指数分布を深く理解するためには、他の確率分布との「表裏一体」の関係性を押さえることが効果的です。

  • ポアソン分布との関係(回数と時間の裏表): 一定の期間に起こる「回数」を数えるのがポアソン分布であり、次に起こるまでの「時間」を測るのが指数分布です。対象とする現象(プロセス)自体は全く同じものです。
  • 幾何分布との関係(離散と連続の対応): 幾何分布は「初めて成功するまでの試行回数(とびとびの数)」を扱う離散型分布でした。この試行間隔を無限に細かくし、時間を「連続的な量」として扱ったものが指数分布です。

このつながりがあるため、幾何分布の最大の特徴であった「無記憶性(過去の経過時間が未来の発生確率に影響しない性質)」は、連続型である指数分布にもそのまま受け継がれています。例えば「すでに30分待っている状態から、さらに10分待つ確率」は、「今から新しく10分待つ確率」と完全に等しくなります。

理解を深める例題(機械の寿命と故障確率)

具体的な数値を用いて、指数分布の確率と期待値の計算を行います。スマホ等の画面幅に対応するため、計算式は縦に並べて展開します。

例題:問題

ある工場で使用している部品は、1年あたり平均して 0.5 回故障する(指数分布に従う)ことが分かっています。この部品が次に故障するまでの期間を確率変数 X(単位:年)とします。
(1)この部品が故障するまでの平均期間(期待値)を求めてください。
(2)使用を開始してから 2 年以内に部品が故障する確率を求めてください。
なお、ネイピア数の値は e^{-1} = 0.368 として計算してください。

例題:解答・解説

1年あたりの平均故障回数が \lambda = 0.5 であるため、この現象は指数分布 \mathrm{Ex}(0.5) に従います。

(1)の解説
期待値の公式 E[X] = \frac{1}{\lambda} を適用します。

E[X] = \frac{1}{0.5}

= 2

したがって、部品が故障するまでの平均期間は 2年 となります。

(2)の解説
2年以内に故障する確率は、累積確率の公式 P(X \le t) = 1 - e^{-\lambda t} に \lambda = 0.5, t = 2 を代入して求めます。

P(X \le 2) = 1 - e^{-0.5 \times 2}

= 1 - e^{-1}

与えられている e^{-1} = 0.368 を代入します。

= 1 - 0.368

= 0.632

したがって、2年以内に故障する確率は 63.2%(0.632) ととなります。

練習問題

問題

ある確率変数 X が指数分布に従っており、その標準偏差が 3 であることが分かっています。このとき、この指数分布の「期待値」と「分散」の組み合わせとして正しいものを1つ選んでください。

① 期待値:3、分散:3
② 期待値:3、分散:9
③ 期待値:9、分散:3
④ 期待値:9、分散:9

解答・解説

正解:②

解説:
指数分布の期待値・分散・標準偏差の数式的な関係性を整理する問題です。

指数分布の公式より、期待値は E[X] = \frac{1}{\lambda}、分散は V[X] = \frac{1}{\lambda^2} です。
標準偏差は分散の正の平方根であるため、以下のようになります。

\mathrm{SD}[X] = \sqrt{\frac{1}{\lambda^2}} = \frac{1}{\lambda}

公式を比較すると、指数分布では「期待値 と 標準偏差 がどちらも同じ値(\frac{1}{\lambda})になる」という重要な性質があることが分かります。

問題文より標準偏差が 3 であるため、期待値 E[X] も自動的に同じ値である 3 と定まります。
また、分散 V[X] は標準偏差を2乗した値(または分散公式より (\frac{1}{\lambda})^2)となるため、以下のようになります。

V[X] = 3^2 = 9

したがって、期待値は 3、分散は 9 となり、正しい組み合わせは ② となります。

まとめ

今回は「指数分布」の公式と性質について解説しました。

  • 指数分布 \mathrm{Ex}(\lambda) は、ランダムに起こる事象の「次の発生までの待ち時間」を表す連続型確率分布です。
  • ある時間 t までに事象が発生する累積確率は 1 - e^{-\lambda t} の公式で求められます。
  • 期待値(平均待ち時間)と標準偏差はどちらも \frac{1}{\lambda} で等しくなり、分散は \frac{1}{\lambda^2} となります。
  • 過去の経過時間が将来の発生確率に影響を及ぼさないという「無記憶性」を連続型分布のなかで唯一持っています。

統計検定2級では、累積確率の公式を使った具体的な計算問題のほか、「ポアソン分布との裏表の関係」や「期待値と標準偏差が一致する特徴」を突いてくる問題が頻出します。幾何分布の連続版として、性質をセットで確実に記憶しておきましょう。

参考 関連用語

用語簡易的な説明
連続型確率分布時間や重さのように、とる変数が連続的な実数値である場合の確率分布です。確率の計算には積分を用います。
ポアソン分布一定期間内に事象が「何回起こるか」という回数を扱う離散型確率分布です。指数分布とは表裏一体の関係にあります。
幾何分布初めて成功するまでの「試行回数」を扱う離散型確率分布です。指数分布と同様に無記憶性を持ちます。
無記憶性これまでに費やした時間が、次に事象が起こるまでの待ち時間の確率分布に影響を与えないという性質です。

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