【統計検定2級】ベルヌーイ試行

統計検定2級

今回は、統計検定2級の確率分布を学ぶ上で、すべての土台となる最もシンプルな試行である「ベルヌーイ試行(ベルヌーイしこう)」について解説します。

統計学では、コインの表裏、製品の良品・不良品、病気の陽性・陰性など、「結果が2通りしかない現象」を扱う場面が非常に多くあります。この極めてシンプルな確率的な実験のことをベルヌーイ試行と呼びます。この概念を正しく理解することが、この後に続く二項分布や幾何分布の攻略に向けた必須のステップとなります。

ベルヌーイ試行を一言でいうと

ベルヌーイ試行とは、「結果が成功(1)か失敗(0)のいずれか2通りしかなく、何回繰り返しても成功の確率が常に一定である独立な試行」のことです。

名前は難しく聞こえますが、本質は「コイン投げ」と全く同じです。結果が2択であり、過去の結果が次の確率に影響を与えないという特徴を持っています。

ベルヌーイ試行が満たすべき3つの定義(条件)

ある確率的な実験が「ベルヌーイ試行」と呼ばれるためには、必ず以下の3つの条件を同時に満たしている必要があります。

  1. 結果が2通りしかない: 起こる結果が「成功」と「失敗」(あるいは「表」と「裏」、「合格」と「不合格」など)の2つに完全に限定されている必要があります。
  2. 確率が常に一定である: 成功が起こる確率を p とすると、失敗が起こる確率は 1 - p(通常は q と表記)となり、この確率は試行を何度繰り返しても途中で変化しません。
  3. 各試行が独立である: 1回目の結果が、2回目の結果の確率に影響を与えることはありません(独立試行)。

ベルヌーイ確率変数(ベルヌーイ分布)の期待値と分散

ベルヌーイ試行において、「成功したときには 1」、「失敗したときには 0」という値をとる確率変数 X を考えます。この X が従う確率分布をベルヌーイ分布と呼びます。

成功確率を p としたとき、この確率変数 X の期待値 E[X] と分散 V[X] は以下のシンプルな公式で表されます。

ベルヌーイ分布の期待値(平均)

E[X] = p

ベルヌーイ分布の分散(ばらつき)

V[X] = p(1 - p)

期待値が p になるのは直感的に分かりやすいですが、分散が p(1 - p) になる点については、試験でも非常によく狙われるため確実に暗記しておく必要があります。

期待値と分散の数学的な導出プロセス

なぜ期待値が p、分散が p(1 - p) になるのか、離散確率変数の定義に基づいて計算手順を示します。スマホ等の画面幅に対応するため、数式は縦に並べて展開します。

1. 期待値 E[X] の導出

確率変数 X がとる値(1 または 0)に、それぞれの起こる確率(p または 1-p)を掛けて合計します。

E[X] = 1 \cdot p + 0 \cdot (1 - p)

= p

2. 2乗の期待値 E[X^2] の導出

確率変数の分散の変形公式(2乗の期待値マイナス期待値の2乗)を使うために、まず E[X^2] を計算します。1^2 = 10^2 = 0 であるため、計算結果は通常の期待値と同じになります。

E[X^2] = 1^2 \cdot p + 0^2 \cdot (1 - p)

= p

3. 分散 V[X] の導出

変形公式 V[X] = E[X^2] - (E[X])^2 に、上記の計算結果を代入します。

V[X] = p - p^2

共通因数である p で括り出します。 = p(1 - p)

以上の計算プロセスにより、ベルヌーイ分布の分散公式が導き出されます。

理解を深める例題(歪んだコインの期待値と分散)

具体的な数値を用いて、ベルヌーイ試行の期待値と分散を計算します。

例題:問題

表が出る確率が 60%(0.6)である、少し歪んだコインがあります。このコインを1回投げる試行において、表が出たら 1、裏が出たら 0 となる確率変数を X とします。
この確率変数 X の期待値 E[X] と分散 V[X] をそれぞれ求めてください。

例題:解答・解説

成功確率(表が出る確率)が p = 0.6 のベルヌーイ試行として、公式を適用します。

1. 期待値を求める
公式 E[X] = p より、以下のようになります。 E[X] = 0.6

2. 分散を求める
公式 V[X] = p(1 - p) に数値を代入します。

V[X] = 0.6 \times (1 - 0.6)

= 0.6 \times 0.4 = 0.24

したがって、期待値は 0.6、分散は 0.24 となります。

練習問題

問題

ベルヌーイ試行、およびベルヌーイ分布に関する記述のうち、統計学的に誤っているものを1つ選んでください。

① ベルヌーイ試行を互いに独立に n 回繰り返したとき、成功した合計回数が従う確率分布を二項分布と呼ぶ
② 成功確率 p が 0.5 のとき、ベルヌーイ分布の分散 V[X] の値は最大となる
③ 箱の中に赤球が3個、白球が7個入っている状態から、引いた球を元に戻さずに2回続けて引くとき、1回目と2回目の試行はどちらも単独では結果が2通りのため、連続したベルヌーイ試行であるといえる
④ 成功確率 p が 0 または 1 であるとき、ベルヌーイ分布の分散 V[X] は 0 になる

解答・解説

正解:③

解説:
ベルヌーイ試行の満たすべき定義(条件)を正しく理解しているかを識別する問題です。

① 正しい記述です。ベルヌーイ試行を複数回(n回)重ねたものが、統計検定2級の主役である「二項分布」になります。
② 正しい記述です。分散 p(1-p) のグラフは p = 0.5 を頂点とする放物線になるため、p = 0.5 のとき分散は最大値 0.25 をとります(最もばらつく状態です)。
誤っている記述です。 「引いた球を元に戻さない(非復元抽出)」場合、1回目の結果によって2回目の赤球の割合(確率)が変化してしまいます。これはベルヌーイ試行の条件である「確率が常に一定」「各試行が独立である」という定義に反するため、連続したベルヌーイ試行とは言えません(元に戻す「復元抽出」であればベルヌーイ試行になります)。
④ 正しい記述です。p=0 または p=1 の場合、結果が100%片方に固定される(確実に失敗するか、確実に成功する)ため、ばらつき(分散)は 0 になります。

まとめ

今回は「ベルヌーイ試行」の定義と公式について解説しました。

  • ベルヌーイ試行は、結果が2通りで、確率が常に一定であり、各試行が互いに独立である実験を指します。
  • 成功を 1、失敗を 0 としたときの理論上の平均である期待値は p、ばらつきを示す分散は p(1 - p) となります。
  • 非復元抽出のように、回数によって確率が変わるものはベルヌーイ試行の定義から外れる点に注意が必要です。

統計検定2級では、ベルヌーイ試行そのものの定義を問う問題のほか、この概念をベースにして展開される「二項分布」や「幾何分布」の計算問題の前提知識として非常に重要です。まずは最もシンプルなこの1回の試行のルールを確実にマスターしておきましょう。

参考 関連用語

用語簡易的な説明
独立試行前に行った試行の結果が、次に行う試行の結果の確率に何の影響も与えない関係のことです。
二項分布(B(n, p)独立なベルヌーイ試行を n 回行ったときの、成功回数が従う離散確率分布です。期待値は np、分散は np(1-p) となります。
幾何分布ベルヌーイ試行において、初めて成功するまでに必要な試行回数が従う確率分布です。
離散確率変数サイコロの目や成功回数のように、とびとびの値をとる確率変数のことです。

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