分散(Variance)とは?
データの「散らばり具合」を定量的に表す指標が分散(Variance)です。各データの値が平均値からどれくらい離れているか(偏差)を計測し、その2乗の平均をとることで算出します。
統計学では、手元にあるデータ(標本)の分散をそのまま計算する「標本分散(nで割る)」と、母集団全体の分散(母分散)を正しく推定するために補正した「不偏分散(n-1で割る)」の2種類が存在します。
標本分散と不偏分散の定義と公式
1. 標本分散(n で割る分散)
得られた n 個のデータ自体のバラつきを表す基本の分散です。記号 S^2 や s^2 などで表記されます。
2. 不偏分散(n-1 で割る分散)
標本データから母集団の分散(母分散 \sigma^2)を推定する際に用いられる分散です。記号 s^2 や u^2、\hat{\sigma}^2 で表記されます。
なぜ n-1 で割るのか?(不偏性と自由度)
1. 標本分散の「過小評価」の性質
真の母平均 \mu ではなく、標本データから計算した「標本平均 \bar{x}」を中心として偏差の2乗和を計算すると、中心が標本データ寄りになるため、中心からの距離の2乗和は真の母集団のバラつきよりも小さく評価されがちになります。
数学的には、標本分散の期待値をとると真の母分散 \sigma^2 より小さくなってしまいます。
2. 不偏性の確保
この過小評価分(\frac{n-1}{n} 倍)を打ち消すために、両辺に \frac{n}{n-1} を掛け合わせて補正したものが不偏分散です。
このように、「期待値をとると推定量が真のパラメータと一致する性質」を不偏性と呼びます。
3. 自由度(Degrees of Freedom)の視点
n 個の偏差 (x_1 - \bar{x}), (x_2 - \bar{x}), \dots, (x_n - \bar{x}) の和は常に 0 になるという制約条件があります。そのため、自由に値を決められるデータは n-1 個しか存在しません。この「独立して自由に動けるデータの数=自由度」である n-1 で割るのが不偏分散です。
分散の重要公式と計算テクニック
1. 「2乗の平均 - 平均の2乗」
実際の計算では、偏差を1つずつ求めて2乗するよりも、以下の展開公式を使う方が遥かに計算が速くなります。
2. 一次変換における分散の変化
データ x_i を y_i = a x_i + b へ線形変換した場合、定数項 b(平行移動)は散らばり具合に影響しませんが、倍率 a は2乗されて分散に反映されます。
試験対策チェックポイント
- 問題文で「不偏分散」や「母分散の推定量」と指定されている場合は、必ず n-1 で割る公式を使用する。
- 標本分散 S^2 と不偏分散 s^2 の変換式 s^2 = \frac{n}{n-1} S^2 を頭に入れておく。
- 一次変換 y = ax + b のとき、定数 b は分散に影響を与えず、係数 a は a^2 になる(符号も正になる)。
- 「2乗の平均 - 平均の2乗」の計算ミスを防ぐため、\sum x_i と \sum x_i^2 を別々に集計する手順に慣れておく。
確認問題(統計検定2級レベル)
問題
分散および不偏分散に関する次の記述のうち、最も不適切なものを1つ選べ。
- 標本分散は全データの平均値周りの2乗偏差の平均であり、母集団から無作為抽出した標本の分散の期待値は母分散より小さくなる傾向がある。
- 大きさ n = 10 の標本データから求めた偏差の2乗和が 180 であったとき、不偏分散の値は 18 である。
- 変量 x の不偏分散が 16 であるとき、変量 y = -3x + 5 の不偏分散は 144 となる。
- データセットのすべての値に 10 を加算しても、算出される分散の値は加算前と変わらない。
解答・解説
正解: 2
【解説】
1:適切。標本平均周りの2乗偏差の和は真の母平均周りの2乗偏差の和よりも小さくなるため、標本分散の期待値は \frac{n-1}{n}\sigma^2 となり母分散より小さくなる。
2:不適切。18 は n=10 で割った標本分散の値(180 / 10 = 18)である。不偏分散は自由度 n-1 = 9 で割るため、正しくは \frac{180}{9} = 20 となる。
3:適切。y = -3x + 5 の一次変換では、分散は係数の2乗倍されるため s_y^2 = (-3)^2 \cdot s_x^2 = 9 \times 16 = 144 となる。
4:適切。データ全体を平行移動(+10)しても散らばり具合(中心からの離れ具合)は変わらないため、分散の値は変化しない。



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