四分位範囲(IQR)と四分位偏差とは?
データを小さい順に並べたとき、全体を4等分する位置にある値を四分位数(Quartile)と呼びます。中央50%のデータが収まる幅を表す指標が四分位範囲(IQR: Interquartile Range)です。
範囲(レンジ)や標準偏差と異なり、両端の25%ずつの極端な値を除外して算出するため、外れ値(異常値)の影響を受けにくい頑健(ロバスト)な散らばりの指標として広く利用されます。
四分位数の定義と四分位範囲の計算公式
データを昇順(小さい順)に並べたときの各位置の定義は以下の通りです。
- 第1四分位数(Q_1): 下から 25% 目(中央値より前半部分の中央値)
- 第2四分位数(Q_2): 中央値(Median:下から 50% 目)
- 第3四分位数(Q_3): 下から 75% 目(中央値より後半部分の中央値)
1. 四分位範囲(IQR)の公式
第3四分位数 Q_3 から第1四分位数 Q_1 を引いた差です。
2. 四分位偏差(Quartile Deviation)の公式
四分位範囲を 2 で割った(半分の)値であり、半四分位範囲とも呼ばれます。
箱ひげ図と外れ値の検出基準(1.5 × IQR ルール)
四分位範囲(IQR)は、データ可視化手法である箱ひげ図(Boxplot)の「箱の長さ(高さ)」に相当します。
また、箱ひげ図において外れ値を判定・検出する際の基準として、一般に以下の 1.5 × IQR ルール が用いられます。
- 上限の閾値(フェンス): Q_3 + 1.5 \times \text{IQR}
- 下限の閾値(フェンス): Q_1 - 1.5 \times \text{IQR}
この上下限の範囲を超えるデータ点は「外れ値(Outlier)」とみなされ、ヒゲの先端からは除外して点として個別プロットされるのが一般的です。
一次変換(線形変換)における四分位範囲の変化
データ x_i に対して y_i = a x_i + b という一次変換を行った場合、変換後の四分位範囲 \text{IQR}_y は標準偏差や範囲(レンジ)と同様に変化します。
- 平行移動(+b): 全データを平行移動してもデータ間の距離(幅)は変わらないため、四分位範囲は変化しません。
- 倍率(\times a): 四分位範囲は絶対値 |a| 倍になります(負の数を掛けても正の値)。
試験対策チェックポイント
- 中央値(Q_2)と四分位範囲(IQR)はセットで選ばれることが多く、「歪んだ分布」や「外れ値が存在するデータ」に対して有効。
- 四分位偏差は IQR を 2 で割った値(\frac{\text{IQR}}{2})である点に注意する。
- 箱ひげ図の外れ値の判定ライン(Q_3 + 1.5 \text{IQR}、Q_1 - 1.5 \text{IQR})の公式は計算問題で頻出。
- 一次変換における性質は、標準偏差・範囲(レンジ)・四分位範囲のすべてで共通して |a| 倍 になる。
確認問題(統計検定2級レベル)
問題
四分位数および四分位範囲(IQR)に関する次の記述のうち、最も不適切なものを1つ選べ。
- 四分位範囲(IQR)は第3四分位数 Q_3 と第1四分位数 Q_1 の差であり、中央 50% のデータの広がりを表す。
- データ中に極端な外れ値が1つ追加された場合、標準偏差や範囲(レンジ)は大きく変化するが、四分位範囲は変化しないか影響が小さい。
- ある変量 x の第1四分位数が 10、第3四分位数が 20 であるとき、y = -2x + 15 によって変換された変量 y の四分位範囲は 20 である。
- 箱ひげ図において、第3四分位数 Q_3 に四分位範囲(IQR)を加えた値(Q_3 + \text{IQR})を超えるデータは、すべて外れ値として判定される。
解答・解説
正解: 4
【解説】
1:適切。四分位範囲は \text{IQR} = Q_3 - Q_1 で計算され、全体の中央 50% に位置するデータの幅を表す。
2:適切。四分位範囲は上位 25% と下位 25% のデータを除外して算出するため、端に存在する外れ値の影響を受けにくい(ロバスト性が高い)。
3:適切。元の四分位範囲は \text{IQR}_x = 20 - 10 = 10 である。y = -2x + 15 の変換における四分位範囲の変化は \text{IQR}_y = |-2| \times \text{IQR}_x = 2 \times 10 = 20 となる。
4:不適切。箱ひげ図における外れ値の一般的な判定基準は Q_3 + \text{IQR} ではなく、Q_3 + 1.5 \times \text{IQR}(または Q_1 - 1.5 \times \text{IQR} 未満)である。1.5 倍の係数が抜けているため誤り。



コメント