今回は、統計検定2級において非常に高い頻度で出題される「共分散(きょうぶんさん)」と「相関係数(そうかんけいすう)」について解説します。
これまでに学んだ「平均」や「分散」は、1つの確率変数やデータの性質を表す指標でした。しかし、実務や試験では「身長と体重の関係」や「気温とエアコンの売上の関係」など、2つの変数の間にある関係性(連動性)を数値化したい場面が多々あります。そのためのアプローチとなるのが共分散と相関係数です。
共分散と相関係数を一言でいうと
共分散とは2つの変数の連動性の「方向」を表す指標であり、相関係数とは共分散の単位の影響を取り除くことで連動性の「強さ」を-1から1の範囲で表した指標のことです。
統計学において、この2つはセットで扱われますが、役割や数値の持つ意味が大きく異なります。それぞれの公式と特徴を順番に整理します。
共分散(Covariance)の公式と性質
2つのデータ系列 X と Y があり、それぞれの平均値を \bar{X}、\bar{Y} とします。このとき、共分散 \mathrm{Cov}(X, Y) は以下の公式で計算されます。
\mathrm{Cov}(X, Y) = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{n} (X_i - \bar{X})(Y_i - \bar{Y})数式を言葉に分解すると、「X の偏差 と Y の偏差を掛け算したものの平均値」(偏差積平均)となります。共分散の値は、2つの変数の関係性によって以下のように符号が変化します。
- 共分散がプラス(正): X が大きいとき、Y も大きくなる傾向があります(正の相関)。
- 共分散がマイナス(負): X が大きいとき、Y は小さくなる傾向があります(負の相関)。
- 共分散がゼロ: 2つの変数に直線的な関係性が見られない状態を指します。
共分散のデメリット:単位によって値が変わってしまう
共分散は関係性の方向(プラスかマイナスか)を知るには便利ですが、最大の弱点は「データの単位によって値が大きく変わってしまう」という点です。
例えば、同じデータであっても、単位を「メートル(m)」から「センチメートル(cm)」に変更するだけで、共分散の値は 100 倍に膨れ上がってしまいます。これでは「関係性がどれくらい強いのか」を他のデータと比較することができません。
相関係数(Correlation Coefficient)の公式と性質
共分散の「単位によって値が変わる」という弱点を克服するために、共分散をそれぞれの標準偏差で割り算して、単位の影響をリセット(標準化)したものがピアソンの積率相関係数 r です。
r = \frac{\mathrm{Cov}(X, Y)}{\sigma_X \sigma_Y}- r:相関係数
- \mathrm{Cov}(X, Y):X と Y の共分散
- \sigma_X:X の標準偏差
- \sigma_Y:Y の標準偏差
標準偏差で割り算を行った結果、相関係数 r はデータの単位に関わらず、数学的に必ず以下の範囲に収まる性質を持ちます。
-1 \le r \le 1「共分散」と「相関係数」の違いを表で整理
2つの指標の決定的な違いと共通点を表にまとめました。
| 指標名 | 数値の範囲 | 分かること | 単位の影響 |
|---|---|---|---|
| 共分散 | 制限なし(マイナス無限~プラス無限) | 連動している「方向」(プラスかマイナスか) | 受ける(データの単位に依存する) |
| 相関係数 | -1 から 1 の間 | 連動している「方向」と「強さ」 | 受けない(無次元数となり比較が可能) |
理解を深める例題(共分散から相関係数を導く)
具体的な数値を用いて、共分散と相関係数の計算を行います。スマホ等の画面幅に対応するため、計算式は縦に並べて展開します。
例題:問題
あるクラスの5人の生徒を対象に、数学の小テスト(変数X)と物理の小テスト(変数Y)を実施したところ、以下の集計値が得られました。
・X と Y の共分散: \mathrm{Cov}(X, Y) = 6.4
・X の分散: V[X] = 16.0
・Y の分散: V[Y] = 4.0
このとき、数学と物理の得点の間における相関係数 r を求めてください。
例題:解答・解説
相関係数の公式 r = \frac{\mathrm{Cov}(X, Y)}{\sigma_X \sigma_Y} を適用するために、まずは分散から標準偏差を求めます。
1. それぞれの標準偏差を求める
標準偏差は分散の正の平方根です。
\sigma_Y = \sqrt{V[Y]} = \sqrt{4.0} = 2.0
2. 相関係数の公式に数値を代入する
求めた標準偏差と、与えられている共分散を公式に当てはめます。
= \frac{6.4}{8.0} = 0.8
したがって、数学と物理の得点の間における相関係数は 0.8 となり、強い正の相関があることが分かります。
練習問題
問題
2つの確率変数 X と Y に関する記述のうち、統計学的に誤っているものを1つ選んでください。
① 相関係数が 0.95 であるとき、2つの変数の間には強い正の直線関係があると判断できる
② X と Y が互いに独立であるならば、その共分散 \mathrm{Cov}(X, Y) は必ず 0 になる
③ 共分散 \mathrm{Cov}(X, Y) が 0 であるならば、X と Y は必ず互いに独立である
④ 相関係数が -1 であるとき、すべてのデータ点は散布図上において負の傾きを持つ1本の直線上に完全に並ぶ
解答・解説
正解:③
解説:
統計検定2級の理論問題で非常によく狙われる「独立」と「無相関(共分散=0)」のひっかけ問題です。
① 正しい記述です。相関係数が 1 に近いほど、強い正の相関(直線関係)を示します。
② 正しい記述です。2つの変数が独立(お互いに一切影響を与えない関係)であれば、連動性は存在しないため共分散や相関係数は確実に 0 になります。
③ 誤っている記述です。 共分散や相関係数が 0 であることは、あくまで「直線的な関係がない(無相関)」ということを意味しているに過ぎません。例えば、Y = X^2 のような綺麗な放物線の関係(2次関数の関係)がある場合、強い関係性があるにも関わらず、直線関係ではないため共分散を計算すると 0 になってしまいます。したがって「共分散=0 だからといって独立とは限らない」というのが正しい理論です。
④ 正しい記述です。相関係数が 1 または -1 のときは、すべてのデータが誤差なく完全に1本の直線上に配置されます。
まとめ
今回は「2変数の共分散・相関」について解説しました。
- 共分散は、2つの変数の偏差を掛け合わせた平均であり、データの連動性がプラスかマイナスかの方向性を示します。
- 相関係数は、共分散をそれぞれの標準偏差で割ることで単位を排除した指標であり、必ず -1 から 1 の範囲に収まります。
- 2つの変数が独立であれば共分散は 0 になりますが、共分散が 0 だからといって独立であるとは限らない(直線以外の関係がある可能性がある)という点に注意が必要です。
統計検定2級では、散布図のイメージと相関係数の数値を結びつける問題や、基本的な計算問題、そして「独立と無相関の論理関係」を問う文章題が定番です。性質の違いをしっかりと頭に整理しておきましょう。
参考 関連用語
| 用語 | 簡易的な説明 |
|---|---|
| 散布図(さんぷず) | 2つの変数を縦軸と横軸にとり、データを点としてプロットしたグラフです。相関関係を視覚的に把握するのに適しています。 |
| 無相関(むそうかん) | 相関係数が 0 または 0 の直近であり、2つの変数に直線的な関連性が見られない状態を指します。 |
| 独立 | 1つの変数の確率分布が、もう1つの変数の値に全く影響を受けない関係です。無相関よりも強い条件となります。 |
| 擬似相関(ぎじそうかん) | 因果関係がないにも関わらず、第3の要因(潜伏変数)によって、見かけ上の相関関係が観測されてしまう現象です。 |


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